弱者の盾
2017.01.03
真岡道場 坂本貴司
12月24日(土)の「幼年部・少年部」の稽古の時に、とても快活な小学校一年生の女の子がいました。
名前は「ゆいちゃん」です。
僕は、空手の道場にも関わらず、
「お~い、みんないいか。これができたらクラスのヒーローになれるからな~。見本をみせるから、家や学校で練習しちゃおうぜ~」と、360度回転させる足払いを見せました。
これはブルースリーやジャッキー・チェンの映画などでよく見る技の一つです。
ただ、この技は、難易度が高いので「道場の練習ではやらないからね」と前置きをしてから見せました。
しかし、休憩中に「ちびっこ」たちが僕の周りに集まり「どうやってやんの、教えて~」と来ました。
僕は出し惜しみする理由がないので、見本を見せましたが、どうやって教えたらいいかわかりませんでした。
僕自身、テレビに張り付いて見よう見まねで習得したので、教え方がわからないのです。
そこでグイグイ「教えて、教えて~!」と、きたのが「ゆいちゃん」でした。
この子は、練習中も髪の毛が引っかかって痛いから、「ゴムを外して!」と言って来たり、「帯締めて!」と言ってくる快活で、とてもチャーミングな子でした。
「幼年部・少年部」の練習時間と一般部の練習時間のインターバルは30分でした。
「ゆいちゃん」のお父さんが迎えに来ません。
「ゆいちゃん」は、一人ぼっちで【体育座り】をして、ジーっとお父さんを待っていました。
僕は、ビックリしました。
30分のインターバルを利用して、サンドバックの【打ち込み】をしようと思っていたのですが、速攻予定を変更しました。
僕:「冬休みはいつからだい?」
ゆいちゃん:「昨日の、昨日!」
僕:「一昨日(おととい)からか。いつまで休みなの?」
ゆいちゃん:「う~ん、まだ決まってない!」
僕:「まっ、たいがい冬休みなんてそんなもんだよね!」
僕は「ゆいちゃん」としばらくおしゃべりをしたあと「腹」を殴る練習をさせました。
ゆいちゃん:「痛くないの~?」
僕:「ハッハハ~、坂本先輩をナメるなよ~~~!もっと、もっと、強く!」
バシバシ、バシバシ!
次に、僕は自分の持ってきたスネのサポーターを「ゆいちゃん」の足に装着させました。
僕:「おもいっきり、坂本先輩の足を蹴ってみな~!」
と、指導しました。
ゆいちゃん:「ホントにいいの?」
僕:「いいんだよ!」
ビシ、バシ!
ゆいちゃん:「痛くないの?」
僕:「ハッハハ~、坂本先輩をナメるなよ~~~!ガンガンいこうぜ~!」
僕は根本的な疑問に襲われました。
「そういえば、ゆいちゃん見るのはじめてだぞ~」
僕:「ゆいちゃんは練習くるの何回目?」
ゆいちゃん:「4回目かな~!」
なるほど、記憶にないわけだ。
僕:「それじゃー、押忍の意味から教えるからね!」
僕は、なぜ道場に入ってくる際に、みんなが「押忍」を2回言うのかの説明をするために、玄関につれていきました。
そこで、ちょうどお父さんが迎えに来ました。
ゆいちゃん:「おそい~」
と、お父さんに言いながら、嬉しそうに車に乗り込んで行きました。
僕の両親も共働きだったので、保育園ではいつもお迎えは一番最後でした。
寂しくて、お父さん・お母さん・に会いたく、心細くて泣いていました。
お父さん・お母さんが迎えに来たときには、全力疾走で抱きついていた記憶があります。
ゆいちゃんを見て、遠い昔の幼少期のことを思い出しました。
子どもにとって、【親】とは大切な存在です。
そして僕たちは、その親御さんたちに、子どもの育成を任された責務があります。
僕には厳しく指導する自信はありませんが、「やさしい人間」に育てる自信はあります。
僕は道場生を心身ともに強い人間に育てあげたいと思っています。
僕の教育方針は、
社会に出たとき、「お前らが【弱者の盾】となって、ケンカして来い!」です。
男の子も、女の子も、「かっこいい」人間に育てあげます!
押忍!